昭和の終わりから平成のはじまりへ。日本車が世界に個性を主張しはじめたこの時代は、まさに“進化と遊び心”の黄金期。
先日訪れたトヨタ博物館で出会った、1970年代〜80年代の名車たちは、私に懐かしさと少しばかりの物足りなさを同時に感じさせました。
🔧 いすゞ ベレット ジェミニ(1975年)
背景:GMとの共同開発で誕生した「Tカー」プラットフォームを採用。ベレットの後継として登場。
- 特徴:
- オペル・カデットをベースにしたFRレイアウト。
- 1.6L SOHCエンジン(G161Z型)搭載、100psを発揮。
- ダブルウィッシュボーン式フロントサス+トルクチューブ式リアサスという凝った構成。
- 当時としては珍しいモノコック構造と高剛性ボディ。
- 文化的意義:欧州テイストを持つ国産車として、若者層に人気。TOWNさんの初代愛車としても思い入れ深い一台。
🌱 ホンダ シビック CVCC 1200GL 3ドア(1975年)
技術革新:CVCC(Compound Vortex Controlled Combustion)エンジンにより、世界で初めてマスキー法をクリア。
- スペック:
- 1.2L OHCエンジン、63PS。
- 全長3545mm、車重680kgと超軽量。
- 文化的意義:環境性能と実用性を両立した“世界に通用する日本車”の象徴。
🛸 トヨタ ソアラ 2800 GT-EXTRA(1981年)
技術と豪華さの融合:
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- 2.8L DOHC直6(5M-GEU型)、170PS。
- デジタルメーター、マイコン制御エアコンなど先進装備満載。
- デザイン:Cd値0.36の空力ボディ、異形4灯ヘッドライト。
- 文化的意義:バブル前夜の“ハイソカー”ブームの火付け役。
🏙️ ホンダ シティ AA型(1983年)+モトコンポ(1981年)
コンセプト
:「トールボーイ」デザインで居住性と個性を両立。
- モトコンポ:
- シティのトランクに収納可能な折りたたみ式原付。
- 49cc 2スト、2.5PS、重量42kg。
- 文化的意義:都市型ライフスタイルと遊び心の融合。CMやアニメとの連動で若者文化を牽引。
🌀 トヨタ カローラ レビン AE86型(1983年)
走りの象徴:
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- 1.6L DOHC(4A-GEU型)、130PS。
- FRレイアウト+軽量ボディ(925kg)。
- 文化的意義:ドリフト文化の原点。『頭文字D』で再評価され、今なお熱狂的ファン多数。
🍭 ニッサン Be-1 BK10型(1987年)
パイクカーの先駆け:
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- 初代マーチベース、レトロで丸みのあるデザイン。
- 1.0L OHC、52PS。
- 文化的意義:限定販売ながら爆発的人気。「かわいいは正義」を体現したカルチャーアイコン。
🏎️ ニッサン スカイライン GT-R BNR32型(1989年)
技術の結晶:
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- 2.6L 直6ツインターボ(RB26DETT)、280PS。
- ATTESA E-TS(電子制御4WD)、SUPER HICAS(4WS)。
- 文化的意義:16年ぶりのGT-R復活。レース界を席巻し、“ゴジラ”の異名を持つ伝説的存在。
🌞 ユーノス ロードスター(1989年)
ライトウェイトスポーツの復権:
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- 1.6L DOHC、120PS。
- FR+ダブルウィッシュボーン、車重940kg。
- 文化的意義:世界的オープンカーブームの火付け役。“人馬一体”の走りで多くのファンを魅了。
🏁 でも、私の「思い出の相棒」はいなかった
そんな素晴らしい展示を巡るなか、私の胸にはある二台の名前が浮かんでいました。
- いすゞ ピアッツァ
私にとっての初代愛車。ジウジアーロによる美しいデザイン、異次元感ある室内、そして「普通じゃない」を選んだ満足感。もしこのクルマが展示されていたら、展示以上の“再会”になっていたでしょう。 - トヨタ MR2 AW11型
二代目の相棒は、背中でエンジンを感じるミッドシップ。コンパクトなのにスポーツカー然とした走り。街中でもワインディングでも、私はこのクルマとともに“運転する楽しさ”を教わりました。
展示にいなかったのが残念だった、というよりも、少し寂しかった。自分の人生の一部だったクルマたちが、そこにいてくれたら、もっと深い共鳴ができたと思うのです。
✨ 博物館は「想い出と向き合う場所」
展示に並んでいた車両たちはそれぞれ魅力に溢れていました。だけど、展示されていないクルマにも、誰かの心のなかに輝く時間があり、それがクルマ文化を豊かにしていることを改めて感じました。
次回訪れるときには、ピアッツァやMR2にもぜひ再会したい。そんな願いを胸に、トヨタ博物館を後にしました。
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