トヨタ博物館にて──北欧の風を感じた日:サーブ92とボルボPV544

先日訪れたトヨタ博物館で、世界中の名車たちに囲まれる中、ふと異彩を放っていたのがスウェーデン車の展示でした。
展示されていたのは、サーブ92(1951年)とボルボPV544(1959年)の2台のみ。
だが、それで十分だったのかもしれません。なぜなら、この2台こそが、スウェーデンという国のものづくり精神を凝縮した存在だったからです。

サーブ 92(1951年)──航空技術から生まれた流線形

展示車の前に立つと、まずその滑らかな流線形のボディが目を引きます。**サーブ(Saab)**はもともと航空機メーカー。第二次世界大戦後に乗用車の開発に転じた同社初の量産車が、この92でした。

空気抵抗を意識した形状、軽量設計、そして高い剛性は、まさに“空を飛ぶ者の思想”を地上に投影した結果。展示車のグリーンの塗装も、まるで深い森をたたえるスウェーデンの風景を思わせます。

ボルボ PV544(1959年)──安全とタフさの象徴

続いては、**ボルボ(Volvo)**のPV544。クラシックな丸みを帯びたボディラインと、どこか頼もしさを感じる佇まいは、当時の北欧らしさを体現しています。

この車の最大の特徴は、**世界初の3点式シートベルトが採用されたこと**。それは、単なる技術的革新ではなく、「人を守る」というボルボの哲学の出発点でした。質実剛健、そして何よりも実直。まさに北欧魂が詰まった一台です。

たった2台、されど2台。大量生産・大量消費とは真逆を行くような、その丁寧で誠実なものづくりの精神に、思わず足を止めてしまいました。

皆さんは、どちらに北欧の魂を感じますか?

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